■葬式費用は、実質的な葬式主宰者が負担すべきであって、相続人が当然に負担すべきものではない (東京地裁判決昭和61年1月28日) 〈事実〉 被相続人Aの実兄](実質的な喪主)が、Aの相続人である後妻Y1、先妻との間の子Y2(喪主)、後妻の子Y3(Aの養子でもある)らを相手として、]の立て替えた葬式費用の返還請求をした。認定事実によると、(1)Y3はわずか22歳の女性であり、全く形式的な喪主にすぎない、(2)Y1・Y2らは葬儀次第の決定から除外され、かつ香典の受領、香典返しの実施等からも全く排除されていた。かかる状況のもとにおいて、争点は、ことにY1・Y2が相続人であるゆえに、葬儀費用を負担すべきかの点である。 〈判旨〉 「葬式を行う者が常に相続人であるとして、他の者が相続人を排除して行った葬式についても、相続人であるという理由のみで、葬式費用は、当然に、相続人が負担すべきであると解することばできない。 こうしてみると、葬式費用は、特段の事情がない限り、葬式を実施した者が負担するのが相当である……。そして、葬式を実施した者とは、葬式を主宰した者、すなわち、一般的には、喪主を指すというべきであるが、単に、遺族等の意向を受けて、喪主の席に座っただけの形式的なそれではなく、自己の責任と計算において、葬式を準備し、手配等して挙行した実質的な葬式主宰者を指すというのが自然であり、一般の社会観念にも合致するというべきである。したがって、喪主が……形式的なものにすぎない場合は、実質的な葬式主宰者が自己の債務として、葬式費用を負担するというべきである。……右の理は、相続財産の多寡及び相続財産の承継の有無によって左右されるものではない」。 |