■寄与分制度は共同相続人間の衡平を図ろうとするものであるから、被代襲者の寄与に基づき代襲相続人に寄与分を認めることも、相続人の配偶者や母親の寄与が相続人の寄与と同視できる場合にはこれを相続人の寄与分として考慮することも許される。 (東京高決・平成元年12月28日) |
■相続財産の推持又は増加に寄与した程度が配偶者については…通常の協力扶助の程度を超え、直系卑属については…通常の相互扶助の程度を超えるものであり、かつ、その評価額が当該事業の費用として相応である限り、寄与分が認められる。 (東京高決・昭和54年2月6日) ■被相続人の財産形成に対する妻の内助の功が多大であったとしても、それが夫婦の協力義務に基づく一般的な寄与の程度を超えるものと認められない場合、寄与配偶者の遺産中に占める潜在的持分は相続分の形で定型化されているものと考えられるので、右寄与分を考慮して法定の相続分以上の遺産を政得させることができない。 (高松高決・昭和48年11月7日) |
■被相続人の財産形成に相続人が寄与したことが遺産分割にあたって評価されるのは、寄与の程度が相当に高度な場合でなければならないから、被相続人の事業に関して労務を提供した場合、提供した労務にある程度見合った賃金や報酬等の対価が支払われたときは、寄与分と認めることはできないが、支払われた賃金や報酬等が提供した労務の対価として到底十分でないときは、報いられていない残余の部分については寄与分と認められる余地があると解される。 (大阪高決・平成2年9月19日) ■被相続人とともに約7年間農業に専従してきた相続人の遺産の推持増加に対する貢献度について、右の期間中特に被相続人の財産の増加があったとは認められないこと、かえって被相続人からの生前贈与により右相続人名義の財産が増加している点などを考えると、既に右相続人の貢献に対してはこれに報いる措置が講じられているとみられること、また右相続人が右期間被相続人とともに農業に専従することによって生活費用の支弁はもちろん自ら酪農経営を始めその拡張も図り得たことなどを勘案すれば、右相続人が他の相続人らに比して無駄働きをし、被相続人に不当利得があったものとは認め難く、右相続人に法定相続分以上に特段のいわゆる寄与分を附加取得させる根拠は認められないとした事例。 (仙台家審・昭和49年3月30日) |
■被相続人から学資等を受けて早くから独立した他の相続人の中にあって、学校を中退し、相続開始まで40年以上にわたり家業の農業に従事し農業経営の支柱となって遺産の推持に貢献してきた相続人には、寄与分として遺産の20パーセントを与えるのが相当である。 (徳島家審・昭和52年3月14日) ■夫婦間の協力扶助義務に基づき家事、育児等に従事しただけでなく、被相続人死亡まで46年間にわたって、中心となって家業である農業に従事し、相続財産の大部分を占める農地の取得、推持について特段の貢献をなした妻及び27年間にわたって報酬を受けることなく家業に従事し、相続財産の取得、維持につき、被相続人の他の子らに比し特段の貢献をなした長男の寄与分として、妻に対して3割、長男に対して1割をもって相当と認めた事例 (福岡高決・昭和52年6月21日) ■相続人である妻と子らが被相続人とともに家業の養豚業に従事してきたという事案について、各相続人の養豚業従事の期間、程度等を斟酌して、結婚以来長年にわたって被相続人に協力してきた妻と事実上被相続人の農業後継者として一家の中心となっていた婿養子に対してのみ寄与を認めるとともに、右両名についても異なる寄与分の額を算定した事例。 (前橋家高崎支審・昭和61年7月14日) ■重い老人性痴呆の被相続人を10年間にわたり介護してきた相続人に寄与分を認めた事例。 (盛岡家審・昭和61年4月11日) |
■被相続人の妻において、その婚姻中勤務を続け、被相続人より少なくはない収入を得ていた場合、婚姻期間中に得た財産が被相続人名義になっているとしても実質的には被相続人及びその妻の共有に属すると考えるべきであり、妻の寄与分として5割をもって相当と認める。 (大阪家審・昭和51年11月25日) ■25年9か月余の婚姻期間中、12年9か月稼働し、その間被相続人の収入の3分の1ないし2分の1程度の収入を得ていた申立人(妻)に対し、寄与分を遺産の3分の1に相当する額と認めた事例。 (神戸家伊丹支審・昭和62年9月7日) |